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Youtubeの強さの秘密を読み解くための3つのキーワード(2) [ 2006.07.29 ]

▼Youtubeの「トレードオフ」

Youtubeという怪物と敵対すべきか、共存すべきか-。
コンテンツホルダーは、Youtubeとの関わり方で生じる「トレードオフ」の間で揺れています。

コンテンツホルダーのある視点から見れば、Youtubeは営業妨害をする敵対すべき相手です。

これまでのコンテンツビジネスは、コンテンツホルダーがコンテンツを提供し、消費者はそれを視聴・体験する権利と引き換えに金銭を支払う、というかたちで成立していました。この場合に重要なのは、コンテンツを消費する主体が個々に独立し断絶していることで、収益機会が多点化するモデルになっていることです。
消費主体間に関係性が生じると、コンテンツがシェアされる可能性が高まり、コンテンツホルダー側の収益機会は減少します。1枚だけ購入されたDVDが、友人間の貸し借りによって、複数のユーザーによって消費されるケースは日常的に存在しています。
Youtubeの脅威は、この消費主体間の関係性を、地縁・血縁というローカルな条件無しで実現してしまうことです。父親が購入してきた一枚のDVDを家族みんなでリビングで観るような気軽さで、Youtube上のコンテンツは、見知らぬユーザー同士のネットワークによってシェアされています。この共有可能性の飛躍的な向上は、コンテンツホルダー側の収益機会を著しく減少させ、旧来の経済モデルを崩壊に追いやるインパクトを持っています。
コンテンツホルダーが、Youtubeという脅威から自分たちのビジネスモデルを守るために、警告や訴訟というかたちで対抗しようとするのは至極まっとうな企業活動のように思われます。

しかし、一方で、YouTubeは、コンテンツホルダーにとっての最良のプロモーションメディアにもなりつつあります。

Youtubeのビデオ配信数が1日あたり1億件を超え、日本国内からの利用者だけでも月間400万人を超える巨大コミュニティへと進化した今、コンテンツホルダーにとっては、膨大な集客とバイラル効果を生みだす魅力的なメディアとして活用することも可能になりました。まったく無名の新人アーティストをコスト無しで世界中に売り出せるビジネスチャンスを、Youtubeはコンテンツホルダーにもたらしています。その結果、MTVやNBCユニバーサルはYoutubeと提携する、という道を選んでいます。

ひと昔前であれば、著作権保有者の正義の主張により、違法ファイルを提供するサービスはあっさりと闇へと葬り去られるのが通例だったように思います。
しかし、ユーザー間のコミュニケーションの価値が見直され、新たなマーケティング手法が模索される現在、コンテンツホルダー側にも、Youtubeの動向を静観したり、積極的に共存の道を選択したりするなど譲歩的な兆候が登場しつつあることは、非常に興味深い現象と言えるでしょう。
この時代の感性の変化も、Youtubeの成長を延命させるひとつの要因となっています。

Youtubeと敵対することで守ることのできる自社の利益と、敵対にかかる労力。共存することで広がる可能性と、失われる権利。何を選んで何を捨てるべきか。突如現われた、Youtubeという巨大コンテンツ流通ネットワークを前に、各コンテンツホルダーが「トレードオフ」に悩まされる日々はしばらく続きそうです。


▼Youtubeの「成長スパイラル」

Youtubeはすでに「成長スパイラル」に入っているように見えます。

かつては、違法性が高く、しかしそれゆえに良質なコンテンツの宝庫としてアンダーグラウンド的にアクセスを伸ばしていったYoutube。前回述べた「コネクタビリティ」というファンクショナルな競争力ともあいまって、既存コミュニティと連動しながら、急速にそのプレゼンスを高めてきました。

そして現在、圧倒的な集客力を得たYoutubeを取り巻く状況は、確実に変化しつつあります。

特筆すべきは、集客力に目をつけた世界中の個人や法人が、自分たちの手で作り上げたユニークで高品質な合法コンテンツをYoutubeにアップするようになり、その良質なコンテンツがさらに多くのアクセスを呼び込むという、理想的な「成長スパイラル」に入っているように感じられる点です。先述した、MTVなどのコンテンツホルダーとの提携の流れも、その現象の一側面です。それは、Youtubeが、動画アップローダという「手段」だった時代から、何か魅力的な動画が無いかとユーザーが訪れる「目的」へと、その地位を変化させつつあることを意味します。
Youtubeにアップされた動画を特定テーマごとに紹介する個人ブログやオンライン上のコミュニティも増えてきており、Youtubeはひとつのカルチャーとして、着実にパブリックな支持を得つつあるように見受けられます。ナショナルクライアントの広告出稿も目につくようになってきました。

もちろん、いまだ著作権問題というビジネス上の大きなリスクを抱えたままではありますが、Youtubeは彼らなりに、アップロードファイルを時間制限したり、著作権者側からの削除要請には地道に対応したりと、周りの情勢を見ながらなるべく事を荒立てないように振舞っているように思われます。イノベイティブなユーザ層からは、Youtubeの共有性という公的な側面に肯定的な評価を与え、むしろ著作権法の方を変更すべきでは、という先進的な議論も提示されるようになってきました。

Web2.0的な感性の広がりが、個人の思考や企業の戦略にどのような影響を与えるのかはいまだ未知数な部分がありますが、Youtubeはそのエッジを体現しつつ、従来の社会の倫理や経済を超越した「スーパー・ソーシャル・サービス」として、インターネットサービスの未来を曳航しています。

トラックバック (1) | ブログコラム | TEXT : 藤原 秀樹

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